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浮遊空母~ぼくの冷たい翼~

第36章 アナハイム・エレクトロニクス〜月の死の商社〜

(4)


エアカーは巨大な工房の前を通り抜けていく…


ほとんどの工房はシャッターが降ろされていたがいくつか搬入搬出のため中が覗ける場所もあった


トレーラーに乗せられていたのはモビルスーツの腕だ


連邦軍のジェガン系では無さそうだ

直線的な工業製品である連邦軍の機体と明らかに異なっている


シンシアにはあれがジオン系のシルエットだとすぐにわかった


連邦軍の正規受注者を請け負いながら、ここは怪しい生産も行っているようだ


シンシアは「この二枚舌の死の商人たちめ」とさらに不信感を強くしていた


あるひとつの建物の中に入るとそこは格納庫になっていた


いくつもの連邦軍のジェガン・タイプのモビルスーツが並んでいる


どうやら特殊部隊向けカスタム機の開発場所のようだ


「元連邦軍とは言え、こちらで見たものはご内密にお願いします」

「わかってますよ、我々の元居た部隊も特殊任務班でしたから」


奥の方にモビルスーツと異なったフォルムの機体が確認できる


ヒューマノイドの手脚と、航空機の身体を融合させたような独特のシルエット


フリューゲルシリーズのようだ


「こちらが通称〈メテオシュタイン〉です」


コックピットハッチは開いており中から女性パイロットが降りてきた


「こんにちは、貴方たちが受け取りに来た人?わたしはテストパイロットのダイアナ!
 ダイアナ・ギルスベルゲン」


女性パイロットが近付くと意外と若いクルーだった


「こんにちは私はシンシア、こちらは夫のナオト、シャトルのパイロットです」


ダイアナはふとシンシアの顔を見つめる


「?」


「よろしくね、私むかしにサイド6に居たのよ」


シンシアはギョッとして、身体が固まった!


「アハハハ!警戒されちゃった! 安心して、私たちは初対面よ でも何かの書類で貴女を見たことがあるわ! きっと私の先輩ね…」


シンシアは明らかに身構えていた


「……アナタ、おいくつ?」


外見は学生あがりの社会人数年目のように見えるが…


「女性に年齢を訊くのは野暮ね、きっとアナタより歳下よ」


ナオトも緊張が走る


ティーンエイジャーのまま成長が停止しているシンシアより、このダイアナのほうが歳下だと名言する光景はとても違和感があった


「よろしくね、先輩!」


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