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浮遊空母~ぼくの冷たい翼~

第36章 アナハイム・エレクトロニクス〜月の死の商社〜

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ナオトとシンシアは分かれて受領の準備に入った

ナオトは別棟に移動して輸送艇のコックピットへ引き継ぎ

シンシアはダイアナから新型機〈メテオシュタイン〉のレクチャーを受けていた



〈メテオシュタイン〉


航空機に手脚を生やしたような独特のデザイン

地上で運用されているフリューゲルシリーズはおもに上半身がモビルスーツ形態、下半身が航空機のようなハイブリッドなフォルムに対して、この新型機は子供が落書きした“飛行機ロボット”のように見えた


「ここで腕の収納、こちらは脚の収納、併せて収納するのならこちらで一括操作も可能です
 試運転は何度か実施しましたが、大気圏突入はさすがに仕様のみです」


「このままバリュート装備無しで大気圏突入出来るの?」


「ええ、ガンダリウム合金とムーバブルフレームのおかげでシャトル形態での突入は可能です
 角度はオートですし冷却もすべて自動ですから初心者でも困難ではありません
 重力下まで降りたら私よりアナタのほうがお得意でしょうし」


「……ところでアナタは…

F機関に居たわけ?」


シンシアは訊かざるを得ない


「ええ、F機関にもE計画にもね……、キンバリー先生にも何度か会ってるわ、彼女元気?」


「……インドネシアの小さな島で軍医をしていたわ」


「そう……、もう諦めたのかしら?」


「どうでしょうね……、小さい女の子を連れていたけど……、また何か企んでいるかもしれない」


「企む? アナタはネガティブに受け止めているのね?」


「? …アナタは怖くないの? 突然、死が訪れるかもしれないのよ?」


「死は突然やってくるものよ、特に戦場ではね!私は計画に参加出来て光栄だわ!この高い反応が死の確率を下げてくれているのは事実ですもの」


「前向きね、アナタはその年齢で肉体が固定したから言えるのよ、私のカラダを見て!
 私は何年も学生気分を味わいたくは無い」


ふたりの被験者は過去のエターナル計画への捉え方が極端に異なっていたのだった…




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