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浮遊空母~ぼくの冷たい翼~

第36章 アナハイム・エレクトロニクス〜月の死の商社〜

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「そういえば格納庫で連邦系以外のモビルスーツらしきパーツを見かけました…
 やはりここは連邦軍直系では無いところなんですか?」


そう尋ねられ、ダイアナも少し言葉を選ぶように小さな声で話し始めた


「アースノイドのキミには理解しにくいかもしれないけど、スペースノイドには移民者というより〈棄民者〉と捉えている人も多いわ

 別にジオンが良いとまでは言わないけど、連邦政府に納得出来ない人達は少なくないの

 私も正直いって宇宙は連邦ではなくスペースノイドに解放すべきだと思っているわ

 でも勘違いしないでね、破壊活動とか反乱行為を正当化しているわけではないの、宇宙は宇宙で自立していくことが好ましいというだけの話しよ」


「地球圏でも反対勢力は居てますし、ボクらはそれらと実際に戦ってきました

 それでも…、ボクは無法地帯は危険だと思います…

 抑止力…、ボクはそう思っています…

 アースノイドは甘いんでしょうか…」


ダイアナは黙ってナオトの話しを聞きながら、うーんと唸ってしまった


「…立場が違うと…、意見は違うのは当然よね…

 抑止力か…、でももう時すでに遅しかもしれない…
 動いてしまったものは、止まらないわ


 新生ネオ・ジオンだけの話しではないの

 軍はもちろん、ネオ・ジオンを支援する組織も周りには暗躍しているの…

 そして支援組織はネオ・ジオンの動きを完全に隠してしまえるのよ、いまこうしているあいだにも…」


「支援組織…?」


「キサンドリア」

「キサンドリア…、それが組織の名前ですか」

「組織かもしれないし、マシーンかもしれない、また人の名前かも…、艦の名前かもね
 キサンドリアは宇宙全体に拡がっているの」


ダイアナはうつむきながら、ぽつりぽつりと語っていく

まるで独り言をつぶやくように…


「フィフス・ルナの落下だけでは終わらないわ、まだ地球圏にしがみついている人類が居るかぎり…」


そのままダイアナは突っ伏してしまった!


「うわ! これ日本酒じゃないか! てっきりご飯食べながら水を飲んでるのかと思っていたのに!」


ナオトは知らない街で取り残され、途方に暮れてしまった……


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