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浮遊空母~ぼくの冷たい翼~

第38章 サイコ・クラングの逆襲

(8)

クーは盗んだ衣服を纏いニューホンコンの街を徘徊していた


サァシャの意識はもう感じない


それとともにクーを苦しめるドス黒い欲望が次第に大きくなる


「このままではマズイ…、他の人間に先に出逢ってしまったら傷つけてしまいそうだ…!」


エターナル計画の副作用が大きく出るクーは明らかに失敗作だ


眠る事か、戦うことしか出来ない


さらにアースラのように悪用する者が現れればその強大な力をクー本人が抑えられない


コールドスリープカプセルが無い今、クーは〈サイコ・クラング〉に戻るしか無いのだが、サァシャを求める意識だけが彼を動かしていた…



その頃、港付近に墜落した〈サイコ・クラング〉のコックピットから司令官アースラが救出され〈グール〉に戻った


「クラング・アースラの用意をしろ!街へ出るぞッ!」


「姐サン、今のアンタの身体じゃ無茶だ」


「バカモノ、ここでクーとサイコ・クラングを手放すわけにはいかんのだ!」


アースラは全身の筋肉痛に耐えながら発進した



戦場は港に移動していた


墜落したサイコ・クラングを防衛するグール軍と、今が破壊のチャンスとばかりにキュール・シュランクのサイコフレーム部隊が交戦している


宇宙港から増援に来たクリストファー・アモットは手負いの〈プラグ〉をいとも簡単に斬り刻んでいく


ソニアの絶叫が響く


ボロボロにされた〈プラグ〉はそのまま街のビルの隙間に撃墜されてしまった…!


「ソニア!」


ノマの〈プラガーシュ〉は錫杖のサイコミュ兵器〈スティッキー〉たちを空中に放出


錫杖はノマの怒りに反応して周囲一帯にビーム砲の嵐を巻き起こした!


「うお、なんだ!?かわせない?あ、兄貴!」



一撃でクリストファーの駆る〈サイスクロー〉を撃墜させてしまうほどのエネルギーを一気に放ち、スティッキーはすべて落下してしまった


あたりのグール軍の期待も巻き添えになって殲滅させられ、ノマはソニアの元へ駆け寄ったが、コックピットの中はもぬけの殻だった


おびただしい血が道路に付着している


誰かが引きずったかのようだ


ノマの脳裏に惨殺された親友ファラの最期が脳裏をよぎる…


「ソニア! ソニア・ミラー!」


ノマは拳銃を手にしてプラガーシュのコックピットを離れた


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