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浮遊空母~ぼくの冷たい翼~

第38章 サイコ・クラングの逆襲

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サァシャは公園のベンチに座っていた


〈グール〉の飛行艇に忍び込んで逃亡のチャンスを窺っていたが思いのほか早く地上に戻ることが出来た


パイロットたちは宇宙港に駐在した部隊の連絡を兼ねた交代要員のようで逃げ出す機会は容易かった


ニューホンコンの街へ彷徨っていたが街は崩壊し、人影も無く途方に暮れてしまった


またサァシャの腕や脚、首には何かの注射痕やチューブが繋がれていて頭痛や疲労感が半端ない


体力も尽きたまたま立ち寄った公園のベンチに腰掛けた


これからどうなるのだろう…


数日前まで普通のパート勤めの主婦だったのに…


これも過去の男への未練を断ち切れなかった自分の業なのだろうか…


再会したクーは少年のまま、今の私を愛してくれた


もう夫グエンの元へ戻ることもないだろう


高慢な女司令官アースラがなぜ私を生かすのかはわからないが、それもこれもクー絡みの何かに役に立つ内容なのだろう



もしかすると私を庇うためにクーは言いなりになってしまっているのかもしれない…


こんな私のために……



私が居ればクーは再び戦いに利用されてしまう

私なんか居なくなれば…





そうサァシャは思うのだが、本心では、クーの傍に居たかった



クーに抱かれた感覚がまだ残っている



思い出せばまた下半身が疼いてくる



こんなに淫らな女だったかしら…



一介の民間人であるサァシャが考え悩んだところで明快な答えなど出るはずも無かった



いつまで座っていたかわからない



公園の隅から人の気配が感じられる



なんだろう?


軍人なら身を隠す行動をとっていただろうが民間人のサァシャは座ったまま様子をうかがう



公園の街路樹から出てきたのは数人の男達だった


軍服を着ているが連邦の正規の兵隊では無さそうだ



「おい、人がいるぜ」

「なんだ?まだ民間人が残っていたのか?」

「女か」



サァシャは嫌な予感がした…


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