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浮遊空母~ぼくの冷たい翼~

第38章 サイコ・クラングの逆襲

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〈サイコ・クラング〉が再起動した数時間前…


深夜の廃墟にうめき声が聞こえてくる


そして男たちの嬌声…



「あぁ、たまんねぇ…、すげぇ締まりだ!」

「おい、早く変われよ、もう我慢できねぇんだ」

「ふぅ……、なかなか良かったぜ、痩せっぽちの女に飽きてたところなんだ、久々に肉付きのいい女が楽しめたぜ」



ベトナム人の普通の主婦だったシャオ・ティ・サァシャは香港の地で徘徊し、レイプされていた



男たちはトランキュリティ軍の敗残兵たちだ


一度は宇宙港を制圧したものの、あっという間に連邦軍に奪還され散り散りに逃げ惑っているところを無防備なサァシャを見つけてしまった



最初こそ抵抗していたものの何巡目からはもう何の反応も出来なくなっていた…


サァシャの心は絶望に支配され
怒り、哀しみ、悔しさなどの感情は既に通り越している
脳がすべての感情をカットしてしまう

そうしないと精神のキャパシティが保たなかった


サァシャは廃人となってしまった…



夜が明けた頃、


徘徊したクー・ヴァン・クーが廃墟の中で投げ捨てられていたサァシャの姿を見つけてしまい


クーの、声にならない慟哭の絶叫



それに呼応するかのように、遠く離れた場所に水没していた無人の〈サイコ・クラング〉が突如再起動した!



クーは近くのシーツをサァシャの身体にかぶせてやる
サァシャの心臓はかろうじて動いているものの、すでに瞳に光りは無く、瞳孔は見開いたまま反応はなかった


クーはサァシャを抱き上げ、廃墟のビルの階段を上がっていった…


高さ数十メートルの鉄骨の上でたたずむ


目の前には巨大な〈サイコ・クラング〉があるじを迎えにやって来ていた



連邦軍の〈ジェガン〉に取り囲まれきたものの



一瞬であたりはメガ粒子の光りに包まれ燃え尽きてしまう!


廃墟は炎に包まれた



コックピット内のふたりの哀しみと絶望は


誰にもわからなかった…


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