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浮遊空母~ぼくの冷たい翼~

第39章 キュール・シュランク

(2)

「そういえば息子さんの事で少し質問が…

 先日ソニアのリハビリ訓練の休憩時間にお遊びでシミュレーションを体験したらしいのですが…、いやまぁテレビゲームみたいなものなんですが、なかなかの成績だったものとクルーから聞いております、息子さんは以前に宇宙で暮らしたことがお有りで?」


「そうなんですか?最近はあまり話しをする時間が無くて…、母親から離れる時期なのはわかるんですが、私にとってはまだまだ子供で…

 宇宙には上がったことはありませんわ、ただあの子の父親は昔連邦軍のパイロットでした…
 一年戦争で無くなりましたが、彼の血を受け継いでいるのかもしれません…」


「…ふむ、素養というのは有るのかもしれませんが…、その訓練というテレビゲームみたいなものは操縦訓練ではなく反応訓練ってやつでしてね…、まぁザックリ言ってしまうと息子さんはニュータイプの素養があるのかもしれません
 まだ訓練レベルの判断なので何とも言えませんが」


「まだ小さいのに?あの子が兵隊に…?」


「いやいや、こちらの早とちりなだけかもしれません、兵器にも乗せていませんし、そのような危険な状況に遭わせていくつもりも有りません

 ただコロニーでは小さな子どもたちでさえ生活のために作業ポッドで宇宙へ出る事があるそうです、そのような宇宙と生活が密着している子どもたちからはチラホラとそのような素養のある者が見つかっております

 地球育ちなのでしたらこちらの思い過ごしなのかもしれませんな」


「……あの子はここに残る事を希望しています、ここに残るという事は兵隊になるということなので…わたしは親としてどうしてやったら良いのか、悩んでいます…」


「うーん、確かに志願兵にしては小さすぎますな、難民船が否応なしに戦闘に巻き込まれていった事例は確かにありますが、ここは軍隊です
 子どもを乗せて戦争するわけにもいきません

 正式な入隊を希望されるのなら、もう少し成長を待ってから、然るべき養成所で組織の一員と成れるよう段階を踏むべきだとは思います

 ただ今は民間人の子供です、別に目くじらを立てる事も無いと思います、なんなら学校では学べない社会体験をしていると前向きに捉えてみてはいかがです?」


思い詰めたミサコをハンセンはやんわりとなだめてやった


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