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浮遊空母~ぼくの冷たい翼~

第39章 キュール・シュランク

(8)

「アキラ、やっぱりここに居たんですね、きっとソニアの部屋に来てると思いましたよ、お母さんが探していましたよ」


ソニアの部屋にやって来たアニーカ・カリードは部屋に残って話しをしていたアキラとノマ・ナッジールに声をかけた


「お母さんか…、どうせまたシャトルの話しだろう…、ボクここに残りたいのにな…」


「お母さんはキミが心配なのです、ここは平和そうに見えて軍隊の最前線の移動基地ですからね

 それともキミは兵隊になりたいのですか?」


アニーカ・カリードは話しをしっかり聞いてあげようとベッドに腰掛けた


「アニーカ、アキラは単純にソニアのそばに居たいだけなんです、でもアキラ…いつまでもここに居られるわけにはいかないわよ」


ノマ・ナッジールも促すしかない
ここはまだまだトランキュリティ軍の活動圏内なのだから


アジア地域で残された宇宙港は限られている


中国の標高の高い場所に作られていた宇宙港や、インド北部の宇宙港はフィフス・ルナ落下により壊滅してしまっており、近隣の宇宙港では地球から脱出しようとする人々でいっぱいだった


民間人流出を良しとしない民間企業組織は宇宙港のある都市を制圧せんと小競り合いを仕掛けてきている


それがいつ大掛かりな作戦に展開するのか、誰にもわからない


そして浮遊空母〈キュール・シュランク〉はその巨大さゆえに格好の標的となるかもしれない


民間人のアキラとミサコの親子がいつまでも安全というわけにはいかないのだ


「…ノマさん、アニーカさん……、ぼくソニアを守りたいよ…、ソニアはいつも誰かを守ろうとして頑張り過ぎてケガをして戻ってくるんだ…

 ぼくには何にも出来ないんだけど、傷ついたソニアをほっとけないんだ…」


ノマはアキラを抱きしめてやる



「ありがとうアキラ、私もアニーカも、タオも、ここに居るみんながソニアを守るわ

 何かあったらみんな悲しいもの

 私たち、もうこれ以上誰も失いたくないのよ

 だから、私たちは全力で守るの、戦うの

 みんなを守るために…


 だからアキラ、あなたは宇宙から私たちを見守って欲しい」


ノマとアニーカは涙ぐみながら語った

言葉には出さなかったが彼女たちの脳裏にはファラ・デハッラがよぎるのだった…


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