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浮遊空母~ぼくの冷たい翼~

第39章 キュール・シュランク

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翌朝、メカニックマンのマーカスと、ドイツから出向で乗船してきている研究員ユッタが頭を悩ませていた


そこへハンセン艦長が格納庫まで降りてきた


「どうした?呼び出されて来たものの、二人とも浮かない顔だな、多少のトラブルなら驚きはせんぞ?」


「いやぁ、全然たいした事じゃないですよ

 率直に言うと〈プロトタイプ・サイコフレーム〉の予備在庫が切れました」


「……大ごとじゃないか」


「アンジェラ機の握り潰されかけたF5のコックピット周りからも回収して再利用はするんですが

 インド工場も壊滅、補填されていた残りの素材はほぼ使い果たしました

 アンジェラ機のほうは再利用で済ませて、ソニア機のコックピット周りは無傷だったのでそのまま使えます

 ただ、次の改修となると…

 一機、いや再利用出来たとして二機までですね…」


「……次はほぼ無いということか……」


「ユッタにも素材の解析を何度もしてもらったんですが、サイコフレームそのものが無重力化での組成となるため、地上での製造は困難ですね

 アブドゥラ州解放軍は月のアナハイム・エレクトロニクスから回ってきた極秘情報だったらしいのですが、仲介してくれていた人間と連絡が取れません、
 今となってはアブドゥラ軍もフィフス・ルナの真下ですからね」


「月か…、どっちのアナハイムだ?フォン・ブラウン側か?」


「回ってきたのはフォン・ブラウン側らしいのですが、もともとはグラナダ側が大元のようです」


「んん…、確かな筋では無いのだが〈完全版サイコフレーム〉素材を使った試作機の話しがあってな…、裏で手配出来ないか連絡を取り合っていたんだが…、それがグラナダ工場だった」

「間に合いますかね?」


「アクシズ作戦の数日前だったからな、いまどうなっているのか…、私にもわからん」


「工作員を潜入させていたのですか?そんな前から?」


「いや、馴染みの使者を出したんだ、信頼は出来るんだが…、まだ連絡は来ていない

 なんにせよ、次に補修するときは声を掛けてくれ、申し訳ないがどの機体を優先するか線引きせざるを得ない、パイロットたちには言うな、不安がる」


「言えませんよ…」


ハンセン艦長はブリッジに戻っていった…


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