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浮遊空母~ぼくの冷たい翼~

第39章 キュール・シュランク

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ユッタがひとりで食堂へ移動したとき、奥のテーブルにはこちらも独りのミサコが居た


食堂のテーブルは特に男女の区分けも無く自由なのだが、何となく手前が男性陣が使用して、奥の方を女性陣が使う雰囲気になっている


24時間勤務のローテーションから少し時間がズレていたため食堂は比較的空いていた


「ミセス・ミサコ、ひとり?アキラと一緒じゃないのね、ご一緒していいかしら」


「ええっと、ユッタ?ユッタ・ゼッドね、今から休憩時間?どうぞ、私も1人なの」


「浮かない顔ね、アキラと何かあった?話しを聞くぐらいなら出来るわよ」


「ありがとう、そういう貴女も沈んだ顔してるわよ、シャトルのチケットが取れそうなんだけど、また1人分しか取れなくて…、艦長さんは別々に旅立ったらどうかと言ってくれてるんだけど…」


「沈んだ気持ちなのはお互い様のようね…、
 アキラなら心配ないんじゃない?ここのクルーとは前から顔馴染みだし、それにスリナガルで倒れた貴女を担いで助けてくれたじゃない、強い子なのよ」


「…そうなんだけど、わたしからは小さな子供のままなのよね、子供扱いしてはいけない歳頃になろうとしてるのはわかるんだけど…、親のほうが子離れ出来ないのかもね」


「大丈夫、また宇宙で会えるわよ!先に宇宙での居場所を作って出迎える準備をしなさいよ!
 地球は今はどこも暴風雨の嵐よ、居残る理由は無いわ、だから皆シャトルに乗り込むのよ」


「ユッタ・ゼッド、貴女はどうするの?」


「私はハノーバー研究所の職員よ、仕事人間の私には家族も居ない、職場の仲間が家族みたいなもの、ここもドイツも私の家なのよ」


ユッタ・ゼッドは苦笑いをした


まだ若い研究員のユッタだが今の仕事を天職だと考えているようだった…



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