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浮遊空母~ぼくの冷たい翼~

第39章 キュール・シュランク

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ユッタ・ゼッドはミサコと別れて浮遊空母〈キュール・シュランク〉の最下層へ移動した


ミサコの笑顔を思い返す
意を決した様子で“話しを聞いてくれてありがとう”と頭を下げたのだった


“日本人はすぐに頭を下げるなぁ、そういえばナオトもよく頭を下げてた、日本男子の武士道か何かだと思ってたけど違うみたいだな……”

とユッタは思っていた


最下層は遊撃部隊〈フリューゲル〉シリーズの格納庫となっており、フリーゲン、ヴァルキューレ、プラガーシュ、プラグと巨大な寝台特急のように棚条に並んでいる


格納庫の奥の方は作業スペースとなっており分解されたアンジェラの〈サイコ・フリーゲン〉F5の機体も有る


もっと奥の方にはシンガポール戦線でファトワー軍に撃墜されかけたソニアの前の機体〈赤いシュターム〉が片付けられている


作業スペースの壁面側には隔離された別のスペースがあり、中では溶接作業が行われている


整備とは別に新たにモノを作る場所〈工作室〉


よく見ると作業しているのは仕事を終えたはずのマーカスのようだ


“……残業? いや、自主的に作業しているのね……、パイロットの事を思うと何かをしてあげたい気持ちでいっぱいなのだわ…”


おそらく分解されているアンジェラの機体から〈プロトタイプ・サイコフレーム〉を回収して再利用しようとしているのだろう


アンジェラ本人はまだリハビリ訓練とシミュレーション訓練中だが遅かれ早かれ復帰してくるのは時間の問題だ


それまでに少しでも早く機体を動かせるように準備しておきたいのだ


余分な新素材が無い今、前準備次第でパイロットたちの生還率が変わるのだから


ふと振り返ると任務を終えた筈のパイロット、ドロレスとロマーナも機体の調整作業を行っていた


二人はラフな私服の格好でコックピットハッチから何やらケーブルを延ばしてコンピュータと接続させている



彼女たちも自主的に残って作業しているようだ


誰しも〈向上心〉で動いている…


ユッタは自分たちの出来る手段が限界近くまで少ないことに胸を痛めるのだった…



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