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浮遊空母~ぼくの冷たい翼~

第40章 最終決戦〜①クラング・スクリームの猛攻

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ソニア・ミラーは意識を取り戻した

あまりの激痛と呼吸のしづらさ

上半身は固形包帯でガチガチに固められ、豊かなバストもサラシを巻いたような痛々しい姿となっていた


隣のベッドではいまだ意識不明のアンジェラが眠っている



看護師の横で心配そうな顔を覗かせるタオとアキラの姿もある


「……戦況は? あれから何時間経ったの?
 シャトルは出た?」


「…ソニア!いいから今は休みなさい!」


「そうだよ、横になっててよ!母さんのシャトルはまだ無事だよ、延期になってるんだ」


「…そう…、アイツは?アレクは?」


「ソニアが戦っていた敵はノマとアニーカが抑え込んだって聞いているわ、でも前線には戻ってきてないみたい…

 だから今はゆっくり休んで」



「そうも言ってられないよ、私の機体はどうなってるの?」


「ソニアの〈プラグ〉は解体されたわ…、使えるパーツは他の機体に回されるってマーカスが言ってたの…」


ソニアはどっかと背中から倒れ込んだ…


「……そっか……、アレクに完敗か…」


「命があっただけでも立派よ! もう無茶な戦いは止めてよ…、私の小さな胸が押し潰されそうだわ…」


「ゴメンね、…でも私は戦士なんだ…、戦場が有ればまた飛ぶよ…、私は飛ぶためにここへ来たんだ…」


「ソニア、以前言ってたようにここを降りて旅に出ましょう! 次は貴女は戻らない気がするのよ…」


「戦いが終わったら旅をしよう、約束するよ」


「ボクも連れて行ってよ!」


「そうだね、…でもまずはお母さんを宇宙に上げないと! ここが正念場なんだ」


「……そんな…」


「マーカスと話しがしたい!私が乗れる機体をまわして欲しい!」


「メカニックの人たちは総動員で働いているわ、私たち機関部のクルーも応援に回されているもの…、今はお願いしても無理よ…」


「…くそ!」


ソニアは自分の無力さに悔し涙を流すのだった…



だが、まだソニアたちは知らされていない


マーカスは優秀なメカニックマンであり何よりパイロット思いの男だ


ソニアの再戦を予知して、プロトタイプ・サイコフレームの貴重な素材を別の機体に転用させようとしているのだ


いまだ運用されていない〈白いシュターム3号機〉


〈サイコ・シュターム〉最後の機体だ


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