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浮遊空母~ぼくの冷たい翼~

第10章 ~再会~

薄暗い廊下


カツカツ音を立てて歩いている自分の靴音が耳に刺さる



アレクはこの廊下が好きではなかった



エレベーターに乗り込み「ブリッジ!」と発するアレクはまだ少年のような声だ



しかし、その凛とした声に若さはあまり感じられず、大人びた思春期のようでもない



心は枯れていた



覚めきっていた



今さら若さゆえの過ちなど持っていない


外見とは裏腹に、アレクの中身は悟りきったような冷たさで満ちていた



エレベーター内の姿見に映る自分の姿を見て、いつもこう思う


「お前はいつまで子供のフリをしているんだ?」



彼がこの実験施設に着任するよりもずっと前から、自分は実験動物だ



何年も何年も



戦士として造り出されてもう40~50年の時間が流れていた



この廊下は昔の研究所の廊下に似ている



だから嫌いなんだろうな



今でも俺はモルモットだ



鏡に映る思春期のような少年の姿は当時と変わらない



もうあの呪わしい研究所は無くなったが、その呪いはいつまでもアレクにまとわりつき解き放ってはくれない



実験台



アレクはあるプロジェクトの被験者であった




しかしそのプロジェクトも今となっては遺物でしかない



自分も遺跡に暮らす消え行く民族みたいなものだ




変わらぬその外見はある意味「呪い」なのだ



死ぬまで戦え



自分はいつ死ねるのだろうか



無駄な思考をしているあいだにエレベーターはブリッジの階層に到着した


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