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ふぁざー × こんぷれっくす

第5章 ファスシネイション

「なっ……何よいきなり」


「いきなりじゃないじゃん。いつも言ってんでしょうが。いつまでも『パパと結婚したい』なんて言ってられる訳ないって。そんなの通じるのは幼稚園までだからね」


「別に、小学生まででも良くない?」

今までも『脱ファザコン』は言われて来たけど、今日はちょっとムキになって無意味な反論をしてしまう。


唇を尖らせて拗ねていると、桜は人差し指でピンと唇を弾いてきた。


「屁理屈~! 可愛くないぞ! それにあんた大学生でしょ!」


冗談ぽく言っているけど、桜の目は本気だ――――。


解ってる……

そんなのパパと結婚出来ないって知ってから、ずっと解っているわよ――――。


だけど……


「自分だってこのままじゃって……思うけどさ……」


パパ以上に素敵な男性が、現れるとは思えないし!


パパが私のパパなのが、いけないんじゃない!


パパがもっとダサかったら、ファザコンなんてならなかったもん!!


ついこないだまでなら開き直ってファザコン宣言だって出来たのに、今日は何故だか喉の奥が詰まった感じで、もどかしくなる。


素直になれに苛立ちに、思わずパパに八つ当たりまでしてしまう。


何でだろ……

パパの笑顔より、清水の意地悪な笑いが目の前にチラついてくるのは――――。

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