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ふぁざー × こんぷれっくす

第5章 ファスシネイション

女子たちの意識が『アヤノ』とやらに向かった隙に、ここからの脱出を試みる。


「じゃぁ……私はこれにて……」

「ちょっと! まだ話は終わっちゃいないわよ!」


ちぇっ! 駄目だったか――――。

でもいつまでも、付き合ってらんないし。

いい加減、この状況を終わらせたい。


「じゃぁ終わらせようよ! 言いがかりも迷惑だし!」

「はっ!? 言いがかりって……」


私が強気に出たら、女子たちが少し怯んだ。


「私は清水と付き合っていません! あなた達にとやかく言われる関係じゃありません!」


ここで『好きじゃない』とも言ってやれば解決する筈なのに、何故かその言葉は発せられなかった。


自分の胸の奥の微かな燻り吹き飛ばすように、更に強気で捲し立てていく。


「もし間違って付き合ったとしても、なんでこんな風にされなきゃいけないの? もしあなた方が清水のこと好きなら、告白すればいいでしょ! 決めるのは清水だ!」


清水、清水、清水――――って、ムカつくぅぅぅぅぅ――――!!


繰り返し名前を言っていたら、憎々しいあいつの不遜な笑いが浮かんで腸が煮えくり返りそうだ。


多勢に無勢の状況で、ここまで私が言ってくるとは思わなかったのか、女子たちは急速に威勢を失っていく。


よし――――勝った。


ほっと安堵して、この場を離れようとした時だった――――。


「わぁぁぁぁ。皆、ごめんね。私のために……」


ゆるふわ女子『アヤノ』が、突如泣き出した。

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