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ふぁざー × こんぷれっくす

第5章 ファスシネイション

怒りのままに清水に掴まれた腕を勢いよく振って、手を解かせた。


そんな私の態度に、清水は怪訝な顔でこっちを見る。


「はぁ?」

「ちょっと! あんた人の気持ちをなんだと思ってんのよ!」

「あぁ? 何で俺に切れるんだよ」

「切れたくもなるわ! もとはと言えば、あんたが私もあの子たちも振り回しているんでしょ! どうしてあの子たちに、私と付き合っているなんて嘘言うのよ! もっと誠実な対応して上げられないの!」

「何言ってんの? お前さっきまで、あいつらに取り囲まれていたんだぞ?」

「そうだけど……そういうことじゃなくて!」


私の言葉に清水は目を細めて一瞬口を噤むと、再び腕を掴んできた。


「……良いから、行くぞ!」

「ちょっ!」


そりゃいきなり大人数で卑怯だと思うけど、状況は違っても清水に振り回されて傷付いているのは、私もあの子たちと同じ気持ちだと思う――――。

このままこの場を去ってしまうのは、違うような気がする!


私は両足に力を入れて踏ん張って、運動会の綱引きのように清水の腕を引っ張り返す。


「やだっ!」

「ちょ、何だよ!」

「あのこ達にちゃんと説明しなさいよ! 私たち、そういう関係じゃないでしょ!」


もういい!
大学中の人に馬鹿にされてもいいから、真実を伝えてよ!

誤解されている方が辛い――――。


踏ん張っている足を引き摺られながらも、食らい付く私に観念したのか清水は腕の力を緩め、小さく溜息を吐いた。

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