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ふぁざー × こんぷれっくす

第5章 ファスシネイション

「ちょ、ちょっと! 離してってば……」


いつもの清水の嫌がらせだと分かっていても、何だか妙に胸が苦しい――――。


それに私が必死に抵抗しているのに腕の力は一向に緩まないし、清水の顎が頭の上に乗っかってきてスッポリと囲い込まれている。


身長、結構あるよね――――なんて、つい頭に過ってしまった。


「清水、苦しいよ……」

「あぁ、そっか」


私の訴えに答えた清水の声は、なんだか楽しそうに聞こえる。


「そっかじゃないでしょ。いつまでこうしている気よ。こんなの誰かに見られたらどうするのよ」

「てか、別にいいじゃん今更。食堂でキスしたの大学中の広まってんだし」

「なっ……」


思い出させて欲しくないトラウマなのに、今までよりは嫌な気分にはなっていない自分がいる。

その理由が分からなくて、胸の苦しさだけが強くなっていく――――。


「ねぇ! もう帰るから、いい加減に……」

「送るよ」


ここでやっと清水は私を開放したのだけど――――新たな展開に突入し始めた。

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