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ふぁざー × こんぷれっくす

第5章 ファスシネイション

「へ?」

「家まで送る」

「何でよっ!」


清水らしかぬ妙な紳士ぶりに、また何か企んでいるのではないかと、つい警戒心が強くなってしまう。


「さっきの連中がまた何か仕掛けて来るかもしれないだろ」

「う……それは多分、もう大丈夫じゃないのかな?」


さっきのさっきで、また来るとは思えなかった。

私があの子たちの立場なら、しばらく清水に顔を合わせられないと思うけどな。


「それに、お前の親友に頼まれているしな。最後までちゃんと約束果たさないと信用なくなるじゃん」

「はい?」


おぉぉぉいっ!
それって桜との約束はちゃんと守るってことで、私の気持ちは無視ってこと!?

結局、こいつは私のことなんか、どうでもいいんだわ!


清水の本音が分かった途端、一気に腹ただしさと恥ずかしさが込み上がる。


「結構です! 一人で帰れますので!」


プイってそっぽを向いて、逃げるように勢いよく歩き出そうとしたら――――


「そうさせる訳ないだろ」


不敵そうにそう言った清水の手が、透かさず私の手を掴んできた。


「きゃっ! 何よ!」


思わず咄嗟に身構えたが、清水は全然気にする様子もなく私の顔を見下ろして、今度は――――


「いいから、行くぞ」


――――優しく微笑んだ。


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