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ふぁざー × こんぷれっくす

第5章 ファスシネイション

清水の笑顔に意表を突かれて驚いたせいか、私の心臓が異様にバクバクし始める。


「……な、なによ……強引だな」

「今更だろ、そんなの」


そう言って、清水はお構いなしに私の手を引っ張って歩き出す。


私の言葉を否定するどころか肯定してくるし、自分で強引って自覚あるって訳?


本当に、俺様なんだから――――。


清水に引っ張られるように歩きながら、心の中で突っ込みを入れた。


出会った頃だったら、こんなことされたら嫌悪感しかなかったのに、今は不思議と嫌じゃない自分が居たりする。


慣れてきたのかな?
きっとそうだよね。

毎回ムキになっても疲れるし、少しくらい気持ちを緩めても良いのかも。


どうせいつかは、関わらなくなるんだから――――。


そう自分に言い聞かせた。


゚*。*⌒*。*゚*⌒*


「ここです」


結局、清水に家まで送らせてしまった。


ずっと会話もなくて無言だし、途中で私から手を離そうとしたけど、清水は全然離そうとしてくれず、お陰で平日の昼間っから手を繋いでフラフラ遊んでいる若者に思われたのか、時たま年配の人の痛い視線を浴びて辛かった。


マンションの入り口前まで着いて、これでようやく手を離して貰えるとホッと安堵の息を吐く。


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