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ふぁざー × こんぷれっくす

第5章 ファスシネイション

な、何だろ?
彼氏の食べ物の好き嫌いも知らないなんてって、思わないのかな?


ママの様子を伺いながら、うどんのつゆを用意して、ショウガや青じそなど小皿に載せ、練わさびも冷蔵庫から出す。


あ、清水の麺つゆにワサビたっぷりいれてやろうかしら――――。


一瞬いいアイデアだと思って口元に緩み掛けたが、ママに怒られるのは必須だし、それがパパに伝わったらきっと悲しい顔される。


何より清水に、どんな倍返しをされるか分からないわ――――。


途端恐ろしい想像が頭を過り、身体がブルっと小刻みに震えた。


うどんが茹で上がりママが冷水で冷やしている間に、私はつゆと薬味をテーブルに運ぶ。


それらを清水の前に置くと、奴はニッコリと微笑んだ。


「ありがとう、風香」


ゾワゾワゾワ――――!


今度は別の意味で、全身が震えた。


普段の傍若無人な態度は何処へやら!

猫被りにも程があるでしょ!


凄く腹ただしかったが、さっきママに聞かれたことをふと思い出す。


「清水……くん、好き嫌いある?」


私の質問に、珍しく清水が一瞬だけ目を見開いた。



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