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ふぁざー × こんぷれっくす

第5章 ファスシネイション

「いや、特にないよ」

「そう……」

「どうしたの、珍しいじゃん」


清水は一応ママに聞こえないようにと気を利かせたのか、小声で聞いてきた。


驚くくらい、気遣った質問をする私が意外ってことだよね――――。


清水の反応に、胸の辺りがチクチクする。


「……ママに、聞かれたから」

「なるほどね」


清水は納得したように、目線だけママに向けた。


チクチク――――嫌な痛みが突き上げる。


今直ぐこの場から立ち去りたい――――。


「飲み物は麦茶でいいですか」

「ん、サンキュ」

「ドウイタシマシテ……」


私は棒読みで返すと急いでキッチンに戻って、麦茶を注ぐグラスを用意する。


あぁ、なんでこんなにムカムカするんだろう。

そうだな――一番の理由は、あいつが何か企みがあって私の聖域に侵入した上に、ママに気に入られているからだ。
あいつの正体が分かれば、ママだって許さない筈だわ――――。


タイミングを見計らって、あいつの化けの皮はがさないと。

このままでは、どんどんあいつの思うつぼだ――――。


私はグラスに麦茶を注ぎながら、『清水排除計画』を決意した。


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