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ふぁざー × こんぷれっくす

第5章 ファスシネイション

麦茶を注いだグラスを私が運ぶと、ママがうどんを載せたトレーを持ってやってきた。


パパの手打ちうどんは艶々で、見ているだけでこしのある歯ごたえと、喉元をつるんと通るイメージが彷彿させられる。


小さい頃から食べて来たパパの手打ちうどんは、私のDNAに深くインプットされているのだ。


ママは笊に載せたうどんを清水に差し出すと、

「お口に合うか分かりませんが」

そう言って、ニッコリ微笑んだ。


ママの言った言葉は一般的にごく普通の言葉だけど、もし清水がパパのうどんを不味いと言うならば――――

うどんで首を絞めてやる。


否、むしろそれを逆手に取ればいいではないか。


『パパのうどんを不味いという人なんかと付き合えない!』

――――それで清水を我が家から永遠に排除できる。


ん~でも、やっぱりパパのうどんが貶されるのは許せないしな~。


ここで複雑な乙女の気持ちが、交錯し始めてしまう。


風香、うどんだけじゃ物足りないから、お惣菜も持ってきて」

「……はい」


だけど現実は、乙女心なんぞ気付いて貰えず進んでしまうのだった――――。


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