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ふぁざー × こんぷれっくす

第4章 ファーストデート

都心のビルの上に水族館――――。


地上に雑多を感じさせない、空に向かっていく海。


来ようと思ったらいつでも来れる距離にあるのに、ここの水族館は初めてだった。


「綺麗…」


水中って観てるだけでも癒されるな…。


ママがお風呂に潜ると落ち着くからって、私もよく真似をしていた。


さっきまであんなに嫌な気分だったのに、異空間にすっかり魅入ってしまい、清水と手を繋いでいることすら忘れている。


魚が泳ぐ風景に夢中になっている私に清水は突っ込むことなく、歩く速さまで合わせてくれていた。


「もう少し行くとイベントスペースもあるみたいだぜ」


「へぇ〜!ビルの中なのが不思議だね」


イベントに釣られてテンションが上がり、清水に向かって自然と笑っている自分がいた。


清水は一瞬だけ真一文字に結んだ口に、毎度の不敵な笑みを浮かべる。


「ペンギンも居るってさ」


そう言って細めた目が、少し優しく見えた気がした。

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