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ラズベリーの恋

第56章 二人の生活

智香は毎週、母親とカウンセリングに行きました。少しずつ学校にも行くようにしました。しばらく学校を休んでいた智香は、まるで別人のようで誰もやっかんだり、冷やかしたりしませんでした。智香は少し表情を無くしてしまいました。喜怒哀楽が上手く出来ません。前のように友達と賑やかに笑う事も、無くなりました。学校に来ると、智香は露木に抱かれて静かに目をつむります。中井ももう、智香には手を出そうとはしませんでした。アメリーは別に彼氏を作り、露木には無関心でした。クラスのみんなは二人が静かに抱き合うのを、そっと見守りました。たまに、露木の家に智香が遊びに来ると、露木の母親は智香が様子が今までと違うのに、気が付きある日聞いてみました。「秀樹、智香ちゃん前と別人のような気がするんだけど?」「ああ、僕が悪いんだ。表情を無くしてしまってね、治るように毎週、カウンセリングに行ってるんだ。兄貴のせいでもあるんだ。複雑に絡みあって、なかなか心の紐がほどけ無い状態だって。」「そうなの。かわいそうね。うちの責任ね。わかったわ。実はまだ聡志の家がそのままで。良かったら、二人で暮らしてみたら?」「えっ!いいの?あんなに嫌がってたじゃないか。」「お母さんも、そろそろ子離れしないとね。いいの。何か趣味を新しく見つけるから。」露木はさっそく智香の家に行って、相談しました。「智香は秀樹君と二人の生活出来るか?」と、父親が訪ねました。智香は露木の顔をじっと見て、こくりとうなずきました。それから、カウンセリングでも相談しました。それと、カウンセリングの先生が智香の学校に行き、智香の症状などを伝え二人の生活が、治療に役立つので学校の承諾ももらいました。二人は優秀なので学校側も気持ち良く受け入れました。いよいよ、二人きりの生活がスタートしました。露木が朝ごはんを作り、その間に智香は洗濯物を干します。お弁当は二人で作り、忙しい朝です。無言だった智香は少しずつ言葉が増えていきました。とにかく、朝は忙しいです。見つめていてはわかりません。智香が「ごめん。」と、最初に言ったのは、卵焼きを焦がした時です。露木は嬉しくて、智香を抱き上げてグルグル回って、頭を撫でました。「智香!愛してるよ。」と、ギュッと抱きしめました。その繰り返しで、言葉が増えて少し表情も表すようになって来ました。学校が終わると、智香は食材の買い物です。

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