真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第1章 クローゼットの向こうは戦国時代でした。
そして現在――すっかり平成に慣れた幸村は、父親連れで毎晩千恵の部屋に現れるようになった。蟄居という罰がどんなものか、千恵は詳しく知らない。しかし幸村が言うには、蟄居とは屋敷に軟禁状態となる刑らしく、とにかく暇らしい。昼間は生計を立てるため細々と内職をしているが、それでも暇なのだそうだ。
その話を聞いた千恵が、暇つぶしになるかと思い、未来の機器であるゲームの使い方を教えたのが、入り浸りになるきっかけだった。彼らは千恵が仕事の間に部屋から本や辞書などを拝借し、現代の知識を身に付けてしまったのだ。そして今では、現代人である千恵をゲームで負かすほどの腕前に成長していた。
千恵がふと画面を見れば、二人の対戦成績は10勝10敗。武士の性分か負けず嫌いな二人は、勝ち負けを明確にすると必ず遺恨が残る。千恵は冷蔵庫から発泡酒の缶を二つ取り出すと、二人の頬に冷え切ったそれを押し付けた。
「二人とも、今日はここまで! あたしは明日も仕事なんだから、それ飲んだら戻って」
「おお、酒! かたじけない、千恵殿」
「やれやれ、千恵が言うなら仕方ないな。勝負の続きは、また今度だ」