真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第6章 拙者はその人の記憶を呼び起すごとに、すぐ兄上といいたくなる。
自分を翻弄する男は、手練れである。経験豊富とは言えない千恵でも、それは痛いほど感じていた。快楽から逃れようとしても、昌幸の手は逃がさずに千恵を閉じ込めるのだ。芯がとろけ、力が抜ける。女の本能が、自然と濡れる秘部を緩ませた。
(も、駄目……流される、気持ち良いっ!)
このまま子羊のように貪られるのを覚悟したその時、不意に昌幸は千恵から身を離す。
「ぇ……?」
「この先が欲しいなら、千恵が自ら望め。望むならば、私はこの恋に全てを捧げよう」
千恵の呼吸は整わず、肌は快楽に粟立ったままだ。望めば、くすぶる火は理性を跡形もなく焦がすだろう。
が、昌幸はここで千恵に選択肢を与えた。千恵の心に、問いかけていた。
(何にも聞かれなかったら、あたしそのまま最後まで受け入れたのに)
昌幸の経験を考えれば、千恵の理性はそれこそ欠片しか残っていなかった事に気付かないはずがない。それでも、あえて訊ねたのだ。
「……答えは、何もすぐでなくとも良い。心の伴わない行為は、私の望むものではないのだ。千恵の心が定まるまでは、いくらでも待とう」