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真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~

第6章 拙者はその人の記憶を呼び起すごとに、すぐ兄上といいたくなる。

 
 昌幸は簪をしまうと、視線をゲームに戻しコントローラーを握る。

「私の想いは、決して不義理ではない。もう顔を合わせる事のない妻達も、千恵を迎える事に異論はないだろう。誰かのためではなく、自分の気持ちで結論を出してくれ」

 特に色気のある話になる訳でもなく、昌幸はゲームを再開した。千恵はその背中をぼんやり眺めながら、また悩む。

(……きっとあたしが頷くだけで、昌幸さんはあたしを幸せにしてくれるんだろうな)

 この手練れに身を委ねれば、おそらく罪悪感や数々の問題すら鮮やかに忘れさせてくれるだろう。目の前にぶら下がる楽な選択肢は、とても甘く見えた。

 そして同時に思い出す、幸村の姿。幸村はあくまで千恵に、現代での幸せを望み、昌幸に気を付けろと忠告してきたのだ。それは間違いなく、幸村の優しさであった。

 目を逸らし現実を忘れ去る仮初めの幸せか、真実と向かい合う生きた悲しみか。夢も覚めなければ、現実と同じ。しかしその夢は、昌幸の寿命を考えれば、確実に覚める日が来るものだ。

(やっぱり、幸村が一番優しい。けれど……だから、辛いよ)
 

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