真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第7章 敵になっても心得は同じ事である。
「なるほど……だから生活の割に、健康そうだったのですね」
信之はそう呟くと千恵に向き直り、深々と頭を下げる。
「父と弟が、大変ご迷惑をお掛けしました。それほど世話になっておきながら把握していなかったとは、真田家当主として恥ずかしい」
「い、いえ、いいんです。あたしがやりたくてやってるんですから。あたし自身も、二人には助けられてますし……」
信之の誠実で落ち着いた人となりに、千恵は内心ほっとした。どうしても知られたくないと二人が言うからには、もっと厳しい人物を想像していたのだ。だが信之の瞳は、穏やかである。怒っている様子は見受けられなかった。
(幸村とか昌幸さんの未来については……気付いてないかな? 普通にしてるもんね、大丈夫だよね)
「蟄居の身である二人が出歩いているとなれば、徳川の人間である私は本来報告する義務があります。が……出先が未来であると話しても、信じる人間はいないでしょう。幕府は動きません。故にあなたに危害を加える事はないと、私が保証します」
「は、はい」
「しかし、真田の当主として、二人がどのような行動をしているかを把握する義務もあります」