真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第7章 敵になっても心得は同じ事である。
「それって、つまり……」
「ここでの暮らしを、しばらく観察させていただきます。特に信繁は、外で働いているのでしょう? その様子、ぜひ見せてもらいましょう。振る舞い次第では、穴を塞がせていただきます」
「兄上!」
幸村は声を荒げるが、後に続く言葉はない。幸村が拳を握り押し黙ると、信之は表情を曇らせた。
「こら信之、勝手に話を進めるな。先ほども話したが、千恵にはつき纏う馬の骨がいるのだ。か弱い女を放って、穴を塞ぐ訳にはいかんだろう」
「それはこの世界のしかるべき機関が請け負う仕事では? 勝手を知らぬ者が守るより、その方が安泰でしょう」
「む……さすが信之、見事な正論だな」
「私に事情を打ち明けたのですから、それくらいされるのは覚悟の上でしょう。では明日から、さっそく見極めさせていただきます」
信之は改めて千恵に一礼すると、渋る昌幸と黙る幸村を引っ張って戻っていく。穏やかではあるが、やはり武士。千恵は三人を見送ると、頭を抱えた。
(振る舞い次第では穴を塞ぐって……どう振る舞えば信之さんは許してくれるんだろう)