真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第7章 敵になっても心得は同じ事である。
幸村がしっかりしていれば、許されるのか。しっかりしていれば、かえって信之は危機を覚えるかもしれない。信之の思う最適を、初対面の千恵が察する事は出来なかった。
(……とりあえず、真紀さんに連絡入れよっか)
千恵に出来るのは、現実的な対処のみ。真紀は幸村が手伝いに来ると知れば、大いに喜ぶだろう。メールを送ると、ひとまず部屋へ戻る事にした。
(明日は信之さんも連れて外か……幸村達と違って現代の知識もないし、大丈夫かな。ただでさえ和服で目立つのに)
と、そこで千恵はふと信之の姿を思い返す。誠実で穏やかな瞳は女性を虜にし、確実に目を引くだろう。そうでなくとも彼は、現代人に比べても頭が一つ分高い。
(……そういえば、信之さんって国親と同じぐらいの背丈かも。もしかしたらあれ、使えるんじゃ)
千恵は部屋の隅に置いてあるハンガーラックに向かい、色々と思案しながら時を過ごしていく。次の日の朝は、あっという間に顔を出した。
次の日、朝食を終えて一息ついた頃に、幸村と信之の兄弟は現れる。だが今日は、昌幸の姿はなかった。
「今日は二人なの?」