真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第7章 敵になっても心得は同じ事である。
「ええ、『信之に監視されて過ごすなんて嫌だ』と駄々をこね、布団から出てこないのでござる。まあ父上はあんなものですから、気にしなくて構わないでござるよ」
幸村が説明すると、信之も頷く。とりあえず二人をリビングのソファに座らせると、千恵は口を開いた。
「あの、信之さん。その格好で外に出たら、けっこう目立つと思うんです。外に出る間、これを着てみませんか?」
立ち上がった千恵が手にしたのは、灰色のスーツ。平成の服に、信之は首を傾げる。
「それは、私のためにわざわざ用意してくださったのですか?」
「ああいえ、これ、本当は国親に渡すはずだったプレゼントなんです。色々あって渡せなくて、でも返品って発想もなくて、結局タンスの肥やしになってたんですけど……信之さんなら着られるかなって」
「そのような物であるなら、構いませんが……しかし、これはどうやって着るのですか?」
千恵が説明し信之が相槌を打つ間、幸村は唇を尖らせ二人を見つめる。
「兄上ばかり、ずるいでござる」
不満げに漏らした呟きも、二人には届かない。ふてくされた幸村は時計に目を向け、早く時間が過ぎるのを祈った。