真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第7章 敵になっても心得は同じ事である。
「……と、こんな感じです。ネクタイは難しいと思うので、私が締めちゃいますね」
「なるほど、では少しの間、あちらの部屋をお借りしますね」
信之が一度千恵の寝室に引っ込むと、幸村は千恵に妬ましげな瞳を向ける。そして先程は届かなかった恨み言を漏らす。
「兄上ばかり、ずるいでござる……」
「いや、だって幸村じゃサイズが合わないでしょ?」
「千恵殿は、大きい異性が好みなのですか? あれも、あの憎たらしい男への贈り物だったとか」
棘のある幸村の言い方に、千恵は塞ぎうつむく。
「……やっぱり、人のプレゼントを着せるのはまずかったかな。新品のまま捨てるなら、誰かに着てもらった方がいいかもと思ったんだけど……ごめん」
「い、いや、まずいという訳ではないのです! 確かに着ずに捨てるのはもったいない、この世界になじむ手段があるなら使わない手はないし、拙者は悪くないと思うでござるよ!」
慌てて意見を翻すと、幸村はソファの上で膝を抱え、ぽつりと呟く。
「ただ、兄上が羨ましかったのです……」
しょんぼりと膝を抱える幸村は、まるで子どものようである。そんな姿にも千恵は心を乱され、鼓動を早めてしまう。