真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第7章 敵になっても心得は同じ事である。
「え? まあ、人にあげるつもりだったし、それなりのものと思って買ったんですけど」
「父上や信繁の面倒もそうですが、このような物をぽんと人に渡せるという事は、女人一人にしては財力をお持ちなのではと思いまして」
「うーん……特にお金がある訳じゃないですけど、仕事は嫌いじゃないですし、見合った対価はもらってますよ」
答えながらも、なぜ信之がそんな事を訊ねるのかが分からず千恵は首を傾げる。すると信之は、顎に手を当て考え込んだ。
「信之さん?」
「千恵殿は妙な男につき纏われていると話しておられましたが、もしかしてそれは金銭が目当てではないかと思いまして」
「でも、国親は私より給料は貰っていましたよ。私に頼る理由はないと思いますが」
「金銭は、あって困るものではありますまい。それに気になるのですよ。その男が再び現れるまで、三ヶ月の間が空いていた事が」
国親自身は、千恵の頭を冷やすために間を取ったと話していた。が、それが真実かどうかなど、千恵には確かめようもない。しかしそうだろうとも頷きにくく、千恵は頭を抱えた。