真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第7章 敵になっても心得は同じ事である。
「いえ、やめておきましょう。今私が思案したところで、確証を得られる訳ではありません。さて、外に行ってみましょうか」
「あ、それじゃネクタイだけつけさせてください」
考えても答えは出ない、というより国親の顔を思い出したくなくて、千恵は考えを振り払う。一歩外に出れば、もう国親の影はなくなるほど騒がしくなるのは目に見えている。千恵は慌ててネクタイを手に取ると、信之を整えた。
「兄上、これから会う真紀殿はかなり奔放な方ですが、驚いてはなりませんぞ」
「奔放な人間は、父上で慣れているさ」
幸村は現代に慣れた自分を見せたいのか、一歩先に部屋から出て行く。千恵はそれが正しい行動なのか内心焦るが、信之の表情は常に穏やかで、心を読み取る事は出来なかった。
そしてそれは、外に出てからも変わらない。高層ビルにアスファルトの地面、行き交う車や現代人を見ても、信之は特に大きな反応を見せなかったのだ。驚きに目を見張り多少強張っているが、幸村や昌幸と違いあまり声は出さない。あまり自由に動かれるのも困るが、大人しいとそれはそれで落ち着かないものだった。