真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第7章 敵になっても心得は同じ事である。
そして大きな問題もなく、一行は公園のすぐ近く、真紀の移動販売車の元へと辿り着く。開店準備をしていた真紀は三人の姿を見つけると、猪のように駆け寄ってきた。
「ちーえーちゃーん! ありがとー、助かったよー!」
他には目もくれず真紀は千恵に抱きつき、頬にキスをする。が、隣の信之に気付くと、硬直してしまった。
「千恵……ちゃん? この方は?」
「あ、この人は幸村のお兄さんの、信之さん。幸村がお世話になってるから挨拶したいって、今日は一緒に来たの」
真紀は千恵に抱きついたまま信之を凝視する。幸村とは違い、モデルのように高い身長とスタイル。穏やかで落ち着きのある瞳。男性の魅力を引き立てるスーツの魔力も加わって、信之は他にはなかなかいない美形となっていた。
「お初にお目にかかります。私は真田信之、愚弟を世話してくださっているそうで、真に感謝しています」
手を差し出されると、真紀は恥じらい頬を押さえる。出した声は、普段千恵や幸村と話している時よりトーンが高かった。
「あた……私は、広瀬真紀です。愚弟だなんて、幸村に世話になっているのは私の方です」