真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第7章 敵になっても心得は同じ事である。
真紀のあからさまな態度の違いに、幸村は頬を膨らませる。
「なんだか、男の面目が木っ端みじんになった気がするでござる」
だが真紀は全く幸村に目をくれず、信之の手を両手で包み上目遣いで訊ねた。
「あの、ちょっと積極的な女の子って、嫌いじゃないですか?」
「え? あ、いや、消極的な娘よりは、積極的な方が好ましいと思いますが」
「じゃあ、料理の得意な子は?」
「料理が得意な事を嫌がる人は、この世にいないのでは……」
すると真紀は大きな瞳に妖しい光を湛え、信之に身を寄せる。自らの武器である豊満な胸を押し付け、艶やかな唇を開いた。
「じゃあ、私は――」
「真紀殿、兄上は鬼のように恐ろしい嫁がいるのです。不用意に手を出せば、兄上もろとも殺されますぞ」
幸村が冷めた声で忠告すると、美獣と化した真紀は冷水でも浴びせられたかのように冷たい目に変わる。さっさと信之から身を離すと、大きな溜め息をついた。
「はあー……薄々分かってはいたけど、やっぱり既婚者か。そりゃそうよね、こんなハイスペックイケメンが、この年で売れ残ってるとか有り得ないし」