真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第7章 敵になっても心得は同じ事である。
真紀は声のトーンを元に戻すと、幸村を引っ張って車の方へ連れて行く。
「そうと分かれば、仕事仕事! ほら、じゃんじゃん売ってがっぽり儲けるわよ!」
態度がころっと変わった真紀を見た信之は、今日一番驚いた顔をして、千恵に耳打ちした。
「あの、この時代の女性は、皆あのような性格なのですか?」
「あはは……あの人は特別だと思いますよ。まあ男女に関わらずあれなんで、裏表はないと言えばないですし」
二人で話していると、真紀に引きずられた幸村の声が飛んでくる。
「二人でそのように親しげに、何を話しているでござるか! 兄上、浮気したら義姉上に言いつけますぞ!」
だが真紀が幸村の耳を引っ張り、今にも乗り出しそうな幸村を止めた。
「はいはい幸村、男の嫉妬はカッコ悪いわよー」
「し、嫉妬ではござらん! 拙者は千恵殿のために言っているのです!」
「自分だって彼氏でもなんでもないんだから、口出しする筋合いはないでしょ!?」
「うっ……真紀殿、なんだか会うたびに拙者への態度が雑になってはいませんか……?」
結局幸村が折れたようで、すぐに文句は収まる。千恵は落ち込みながら準備する幸村を眺めながら、苦笑いした。