真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第8章 遊園地を回りながら、こう考えた。
「しかし、千恵殿にご迷惑が……」
渋る返事も、二人同時に飛んでくる。千恵は二人を睨みつけると、強引に話を押し通した。
「余計な気を遣う必要はないの! あたしがイケメンを引き連れて騒ぎたいだけなんだから、付き合いなさい」
自分を貶めてまで貫く姿に、二人は頷くしかない。千恵は満足げに笑うと、さらに付け足した。
「あ、そうだ。4日は、嫌がっても昌幸さんも引っ張ってきてね。そもそも外に出るようになったきっかけだって昌幸さんなんだし」
すると幸村が、頬を掻きながら唸り声を上げる。
「しかし、父上が素直に承諾するかは分かりませんぞ。今日だって、子どもみたいにだだをこねて嫌がっていましたし」
「いえ、大丈夫ですよ。父上が外に出たがらない理由は、よく分かりましたから」
「兄上? 父上が外に出たがらないのは、兄上がいると好き放題出来ないからではないのですか?」
幸村が首を傾げると、信之は道路やビル、夕空を見上げた。
「悔しいのですよ、この進んだ世界が」
「悔しい……?」
今度は、千恵と幸村の声が重なる。信之はそれに苦笑いすると、遠くを見つめたまま語った。