真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第8章 遊園地を回りながら、こう考えた。
「例えばこの地面一つすら、私達には再現できません。作り方が分かりませんし、おそらく分かったところで町全体に張り巡らせる財力もないでしょう。私達にとっては夢のような技術が、ここには溢れかえっています」
「それは、未来だから当たり前でござろう?」
「誰しもがそう割り切れるほど、切り替えの早い人間ではないのですよ、信繁。私はこの世界を怖くも思います。一歩歩くたび、思い知らされるのです。自分は当たり前の事すら再現出来ない、劣った存在なのだと」
信之は幸村や千恵に目を戻すと、胸に手を当てる。
「私ですらこうなのですから、あの父上ならどれだけ悔しかった事か。死んでも表には出さないでしょうが、大分弱気になったと思いますよ」
「そういえば父上は、初めて外に出た日、途中からやけに休みたがっていましたな。あれは早く戻りたかったのかもしれません」
幸村は当時の昌幸を思い出し、顎に手を当て考え込む。
「じゃあ、こっちで思い出なんて、昌幸さんには酷でしょうか」
「いえ、引っ張り出しますよ。現実は現実なのですから、きちんと向き合っていただきます」