真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第8章 遊園地を回りながら、こう考えた。
微笑みあっさりと言い切る信之は、やはり真田の血を引いているようだった。千恵は信之に感謝しながら、頭の中で計画を練り始める。目標が決まれば、足取りは軽かった。
そして、運命の日。長い休みに浮き足立つ民衆を掻き分け、戦国の世では決して会う事も許されない家族が、平成の世に集結していた。
「人が多い……」
「父上、この期に及んで逃亡は許しませんよ。あまり我が儘を言うようでしたら、今後一切酒の援助は止めますからね」
「ほら父上、あれが噂のジェットコースターですぞ! 乗ってみましょう!」
どこからともなく聞こえる、子どもの笑い声。すれ違う人は皆明るい顔をしていて、紛れる過去の存在を訝しむ者はいなかった。精々、幸村と昌幸の和服姿にちらりと目を向けるくらいである。しかし日常とは異なる陽気な世界に、それは特別な違和感を覚えるほどのものではなかった。
「いきなり遊園地は、特に慣れてない信之さんには大変かもしれないけど……来てくれて、ありがとうございます。今日は子どもに帰ったつもりで、楽しんでくださいね」