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真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~

第8章 遊園地を回りながら、こう考えた。

 
 千恵が頭を下げると、信之は首を横に振り微笑む。

「いえ、私の方こそ、このような機会を設けていただきありがとうございます。無知故にご迷惑を掛けるかもしれませんが、よろしくお願いします」

 信之も気分が高揚しているのか、真紀をも虜にしたスーツ姿の魅力はますます増している。千恵が思わず見とれてしまうと、幸村が割って入った。

「千恵殿! まずは遊園地の花形と覚え高い、ジェットコースターでござる! さあ並びましょう」

「う、うん」

 千恵の手を引き、幸村は半ば強引に歩き出す。昌幸はそれを白けた目で眺めながら、はぐれないよう後を追った。

「全く、あれほど分かりやすくて腹の立つものはないな」

「父上、無粋な真似も醜い嫉妬もよしてください。その懐にある忘れ形見が、一番の同伴者でしょう? 彼女にも、異世界を感じさせてやってください」

「それはそれ、これはこれだ! いいか信之、遊園地というものはそもそも愛し合う二人の定番逢い引きコースでな――」

 くどくどと語る昌幸は、やけに遊園地について詳しい。嫌だと言いながら影で色々調べたのだろう、その文句も、信之には可愛いものだった。
 

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