真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第8章 遊園地を回りながら、こう考えた。
夕方、帰る時間が迫る頃、幸村が指差したのは観覧車だった。
「あれは、共に乗る人物と語り合い、時には頂上で止まりやきもきさせ、恋の手助けをすると有名な観覧車ですな!」
「あのさ幸村、昌幸さんもそうだけど、一体どこからそんな情報仕入れてるの?」
「千恵殿が読んでいる漫画にござる。あと、真紀殿にも教えていただきました」
四人は観覧車の列に並びながら、何気ない雑談を交わす。が、信之は一人顎に手を当て、何かを考えている様子だった。
そして順番が近付くと、信之は係員に一礼し、何かを耳打ちする。三人が首を傾げていると、係員は手を叩き頷いた。
「信之さん、何してるんですか?」
「千恵殿、観覧車は私と二人で乗りましょう。管理人の許可は得ました」
「え?」
千恵が目を丸くしている間にも、観覧車は動いている。信之の意図が分からないまま順番は回り、文句をこぼす幸村や昌幸を置いて、千恵は信之に促されるまま観覧車に乗った。
「この混んでる時に、よく二人で乗せてくれましたね」
ゆっくり上がっていく観覧車から景色を覗けば、並ぶ人の山。向かいに座った信之は笑顔で、さらりとその疑問に答えた。