真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第8章 遊園地を回りながら、こう考えた。
「恋人に結婚を申し込みたいから、二人にしてほしいと頼みました。快く承諾してくださいましたよ」
「こ、恋人って……機転が利きますね、信之さん」
「父上や信繁が、散々そのような話をしていましたから。ああでも、遊園地、とは恋人だけでなく、家族でも来るようですね。沢山の親子連れとすれ違いました」
信之も窓から景色を眺め、楽しげに笑う。
「出来る事なら、一度私の妻や子も連れてきたいものです。叶わぬ事とは分かっていますが」
次第に小さくなっていく人々の波。雑踏から離れ静寂がゴンドラを包むと、信之は千恵に真摯な瞳を向けた。
「千恵殿。私はこの数日、この世界と信繁を見て、分かった気がします」
「分かったって……」
「戦乱は収まり、私達の世は徳川により泰平が築かれます。つまりそれは、豊臣に忠義を捧げる信繁の、武士としての死でもあるのです。私は信繁の命を繋ぎましたが……あの子の心を、あの時代にもう一度花開かせる事は出来ないでしょう」
「信之さんが説得して、徳川に許してもらったりは出来ないんですか?」
「それは無理ですね。無理な事は……あなたが、一番よく分かっているでしょう?」