真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第8章 遊園地を回りながら、こう考えた。
信之は千恵の前に跪き、固く握られた手を取る。信之が動いた事で、観覧車は僅かに揺れた。
「……無論、それは簡単な事ではありません。問題も山ほどあるでしょう。私が望んでいるからといって、千恵殿に無理強いはさせられません」
「あ、あたし、は……」
「返事は結構ですよ。今ここで決められる事ではないでしょう。ただ、選択肢に入れてほしいのです。信繁の全てを包み、受け入れる覚悟があるなら……あの子をさらって連れて行く事を」
信之が手を離し向かいに座り直せば、観覧車はまた静けさを取り戻す。それから二人は会話せず、登り、そして下りていく観覧車の景色をただ眺めていた。
二人が観覧車を降りれば、係員がちらちらと二人を覗く。視線に気付いた信之は千恵の肩を抱き寄せると、係員に一礼した。
「の、信之さん!?」
「せっかく取り計らってくれたのですから、良い結果だと思わせた方が皆のためでしょう。それに――」
しばらく肩を抱かれながら歩いていると、後ろから聞こえてくる声。次のゴンドラから降りてきた幸村が、血相を変えて走ってきたのだ。