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真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~

第8章 遊園地を回りながら、こう考えた。

 
「しかし兄上は、笑ってくださいました。拙者はまだ、兄上の弟でよいのでしょうか」

 問い掛ける幸村に信之が見せたのは、兄らしく包容力に溢れる笑みだった。

「まだもなにも、お前は生涯私の弟だ。例え敵味方に分かれようと、遠くへ離れようと、変わらずに」

 信之の答えに、幸村は涙を拭い笑顔を見せる。二人を隔てるものは、もうどこにもなかった。







 出入り口を抜ければ、遊園地の魔法も終わる。平成から戦国の世に戻れば、心から思い合う兄弟も、また分かれてしまう。夢を終わらせるのは、自分自身の一歩。踏み出した彼らは名残惜しさに、振り返り遊園地を見上げた。

「夜なのに、明るいでござるな」

「まるで、星が地上まで降りてきたようだ。手を伸ばせば、掴めそうだな」

 思い耽る兄弟の頭に手を置くと、昌幸は二人をわしわしと撫で回す。そして迷惑がる二人に、悪戯めいた笑いを浮かべた。

「まったく、二人とも私に似て感受性が豊かだな。私の教育が良いから出来る息子が生まれるのだ、なあ千恵?」

「え? あ……そうですね」

「なんだ、千恵まで呆けて。あまり放心していると、その隙に私が千恵をさらってしまうぞ?」
 

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