真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第9章 嵐が来る。
「国親は、あたしと寄りを戻したいから声を掛けた、って言ってたよね」
「そうだよ。本当に好きな人は誰か、遊びと本命がはっきりしたから、やり直したいんだ」
この前何をしたか忘れたかのように、国親は平然と言い切る。だが千恵は、それをはっきり切り捨てた。
「本当は違うよね。お金、目当て……でしょ」
金という言葉を耳にすると、一気に国親は表情を無くす。その変わりように、千恵は疑いを確信に変えた。
「なんでお金が必要になったのかは分からないけど、あたしは人に渡せるようなお金なんてないの。残念だけど、何も出来ないから」
「……慰謝料、払わないで逃げるんだ」
「は?」
「俺を捨てて新しい男に走るのに、慰謝料もないんだ。義理、通ってないよね」
国親の発想に、千恵は呆れかえってしまう。慰謝料をもらいたいのは、男に恋人を奪われ捨てられた千恵の方である。国親が被害者ぶるのは、あまりに身勝手だった。
「出せないよ、そんなお金。もうあたしが国親にしてあげる事は、何もないの。今日はそれをはっきりさせたくて、呼び出したの」