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真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~

第9章 嵐が来る。

 
 国親はテーブルに肘を突き、しばらく千恵を見つめる。が、長い溜め息の後、苦笑いを浮かべた。

「――分かったよ。もう、どうしても無理なんだな」

 理解を示してくれた言葉に、千恵はテーブルの下の拳を僅かに緩める。国親もリラックスしたように椅子の背に深くもたれると、目を閉じた。

「そこまではっきり言われたら、仕方ないな。今まで悪かった、お父さんにも、謝ってて欲しい」

「うん……」

「でも、今日は最後まで付き合ってくれないかな? この前は途中で帰られて、大恥掻いたし」

「わ、分かったわよ。あの、でも……ちょっと突っ込んだ話になるけど、お代は大丈夫なの? お金、困ってるんでしょ?」

「そうだね、本当なら、千恵奢って! って言いたいところ。けど、自分で自分の分ぐらいは払えるよ。今日は、ワリカンで」

 そのやりとりは、かつて二人が共に暮らしていた頃の和やかな空気と同じで、千恵もすっかり警戒を解いていた。

「お金に困ってるって言うなら、知り合いの弁護士さん紹介しようか? 払わなくていいお金とか、もしかしたら見つかるかもしれないし」
 

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