真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第9章 嵐が来る。
昌幸はさり気なく千恵を自分の背に隠すと、警戒を強める。千恵の危機に駆けつけたという事で、昌幸は恭介を味方だと思っていた。が、国親が千恵を捨てた原因であるなら、話は別である。
「それは……大分話が遡ります。三ヶ月、いえ、もう四ヶ月ですね。あの時僕は千恵さんと鉢合わせて、二股されたと知りました。言い訳にしかなりませんが、僕、本当に国親がフリーだと信じていたんです。彼女がいるって知ってたら、絶対好きになんてなりませんでした」
恭介は申し訳なさに頭を垂れながら、ぽつぽつと語っていく。
「騙されてた事に気付いたら、どうしても国親が許せなくなって……僕、国親の会社に突撃して、全部ぶちまけたんです。この男は男を弄んで、ポイ捨てする最低野郎だって。復讐して、ようやく僕はスッキリしたんですけど、それが間違いでした」
「待て、そんな事をすれば、間違いなく会社はクビになるのではないか? 良くても降格、左遷は避けられないのでは」
昌幸の問いに、恭介は頷く。すると拘束された国親は、歯を食いしばり恨み言を漏らした。
「……誰も俺を庇う人間はいなかった。噂を鵜呑みにして、白い目で見られて避けられて、辞職まで追い込まれたんだ」