真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第9章 嵐が来る。
「それは事実なのだからお前の落ち度だ、恨むのは筋違いだろう。が……恭介といったな、それはお前も、報復としてはやりすぎだ」
昌幸の指摘に、恭介は唇を噛み締める。まさにその報復が、全ての始まりだったのだ。
「国親は……責任を取れと、僕に慰謝料を求めてきました。けれど僕、顔を見たらやっぱり腹が立って。知り合いの弁護士に頼んで、追い払ってもらったんです。それでしばらくは平穏に過ごしていたんですけど、不意に思ったんです」
恭介は、昌幸の背の奥に隠れたまま見えない千恵に顔を向ける。二股の傷は深いのだろう、千恵は隠れたままで、恭介と対面する様子はなかった。
「国親は仕事も辞めさせられて、社会的信用を失ってどこに行くのか……もしかしたら、あの時の彼女が危ないかもしれないって」
「なるほどな。この悪漢が千恵の前に再び姿を表すまで時間が空いていたのは、私生活の混乱、そしてお前とのトラブルがあったからだな。案の定この愚か者は、千恵に標的を変えていた訳か」
「彼女の事を見つけ出して、すぐに声を掛けるつもりでした。けれど……僕の顔なんて、きっと千恵さんは見たくないでしょう。全ての原因は、僕ですし」