真田幸村九度山ライフ~恋の相手は戦国武将~
第9章 嵐が来る。
「結局声は掛けられず、しかし放って置く事も出来ず、千恵を延々と尾けていた訳か。全く……声を掛けていれば、もう少し手の打ちようもあっただろうに」
「ごめんなさい、全部……僕が弱いせいです。罵られても、殴られても、僕が千恵さんに伝えなきゃいけなかったのに……本当に、ごめんなさい」
恭介は深く頭を下げ、震える声で謝る。すると千恵はゆっくりと昌幸の背中から顔を出し、暗い声だがはっきりと答えた。
「あなたと、そっちの連れの人も――尾けてくれたおかげで、あたしは助かったんでしょう? なら、文句なんか言えません。幸村や昌幸さんを連れてきてくれて、ありがとうございます」
すると国親が、身を捩りながら千恵に叫ぶ。
「千恵、そんな奴に礼なんて言わなくていい! そいつのせいで俺達は別れなきゃいけなくなったんだぞ!」
「だからなんだって言うの!? あたしを捨てたのは、この人じゃなくてあんた自身でしょ! あたしはこの人以下だって言ったのは、あんたじゃない!!」
千恵は国親の言葉に、また涙を浮かべる。
「それにもう、そんな事どうだっていいの! あたしの中で、国親に対する気持ちなんてもうないの!」